2023-01-24
乳製品と卵の輸出額増加でオランダの農家潤う

農業製品輸出では世界第2位のオランダの2022年の輸出高は1223億ユーロという最高記録を更新した。これは2021年の17%増である。とくに、乳製品と卵は国外では引き手数多だった。これはオランダ中央統計局とワーへニンゲン大学リサーチ(WUR)が発表した数字である。
この増加は、値上がりするコストを輸出価格に転嫁したことが反映されている。例えば、農家は飼料や化学肥料、花卉栽培業者は高騰するエネルギー費を輸出価格に転嫁した。
最も需要が多かったのはオランダの乳製品と卵。一昨年はこれらの製品は輸出で第3位だったが、価格を上げたことでトップに躍り出た。コスト上昇はウクライナでの戦争によるもので、エネルギー費と飼料価格の上昇が要因となっている。卵価格の上昇は鳥インフルエンザで供給が減ったことも大きな要因である。
輸出のために乳牛や鶏を増やし、自国での窒素排出が増えるという状況を批判する人たちも少なくない。
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2023-03-09
オランダの農業従事者、農薬による健康被害増

オランダの農家で働く人たちの血液に農薬に含まれる成分が多く含まれ、農家のハウスダストには144種の有害な農薬成分が見つかった。ヨーロッパの基準ではこれが規制することが難しい。複数の成分が身体にどのような影響を与えるのかを見極めるのが難しいからだ。研究者は、パーキンソン病やガンそして生殖能力の低下などが関係すると懸念している。
アデマ農業大臣が下院に農地に使う水の水質に関し書簡によれば、オランダの農地の42%が汚染されているという。窒素やリン酸塩などの肥料による汚染である。また農薬による汚染も進んでいるという結果がワーヘニンゲン大学がEUのために行った調査でも明らかにされていう。汚染は農地だけでなく農家そして人体にも広がっている。
農薬による汚染は、地域によって大きく異なる。ある場所では、毒性基準を千倍以上超えている。欧州食品安全機関 (EFSA) によると、ハウスダストに含まれる物質の 40% が「おそらくまたは確実に」発がん性である。さらに、薬物の 33% は内分泌かく乱物質であり、63% は生殖能力に影響を与えたり、胎児の異常につながる可能性があるという。またパーキンソン病も引き起こす可能性が高い。この病気は世界で急速に増加している脳疾患で、農薬の使用の増加と比例している。
2018 年、オランダ国立衛生研究所RIVM は地元住民の調査で果物の栽培と疾病の関連性を発見した。その 2 年後、保健評議会は、脳疾患のパーキンソン病、アルツハイマー病、および筋肉疾患の ALS との関連性を立証する国際的な研究を指摘している。
有機農法は化学農薬を使用しないが、農場はサプライチェーンや周辺の畑を通じて接触することもある。「輸入された大豆は汚染されている。また、船の船倉は、昆虫の被害から貨物を保護するために、非常に有毒なシペルメトリンで処理されている。」
別の学者は、農地の汚染は喘息、花粉症、多発性硬化症などの免疫疾患の増加との関連していると指摘している。
農地の汚染は間接的に消費者へも影響を与えていることは確かだ。
2022-09-12
スリナムがオランダの農業問題を解決できるかも

今日からオランダのルッテ首相が南米のスリナムを訪問する。オランダの首相が元植民地であったスリナムを訪問するのは14年ぶり。スリナムは南にブラジルと国境を接し、北はカリブ海、大西洋に面する国だ。16世紀にオランダ、イギリス、フランス、スペインの探検家によって探検され、17世紀に入るとイギリス人とオランダ人が入植し、黒人奴隷を使用してタバコ栽培を行った。両国は領有権を巡り争ったが1667年のブレダ条約でオランダはニューアムステルダム(現ニューヨーク)とスリナムを交換しオランダの領有権が確定した。オランダから完全に独立したのは1975年。スリナムの経済は、強く鉱業に依存している。総輸出額に占める鉱物資源の割合は2000年時点で8割に達した。
スリナムのサントクヒ大統領は、ルッテ首相との会談にあたり、オランダに経済援助を求めるだけでなく、スリナムからオランダに提供するものがあると述べている。同国はコロナ禍とウクライナ戦争で大きな経済的打撃を受けている。インフレ率は50%にも上る。ただサントクヒ大統領は「両国が主従関係ではなく、大人同士として協力したい。」とし、「オランダは窒素問題が大きな問題となっているが、スリナムがこれを解決できるかもしれない。広大な土地を持つスリナムは農地を開発できる。その上、最近石油とガス田が発見されたことで、エネルギー問題でも手を貸せる可能性がある。」と話している。農業製品輸出では世界第2を誇るオランダは、窒素排出による農家の削減問題でここ数ヶ月農家によるデモが続いている。
2022-07-07
政府「緑の農家」にオランダ農業の将来性

窒素排出をする農家を減らそうとする政策に反対し、農家のデモや暴動が続いている。オランダの農業は行き詰まりに直面しているのだろうか? 効率性と生産高だけを求めて発展し、輸出高世界2位を誇るオランダの農業は、根本から見直しが必要なのかもしれない。昨日、有機農業を行う農家2500人が、新しいシステム「緑の農家計画」を提案したが、農業大臣と自然・窒素排出担当大臣はこれを肯定的に受け止めている。「これがオランダの農業の将来だ」と農業大臣は称賛している。
提案では「農作物に対し適正な価格がつけば、有機農家はやっていける」と述べている。緑の農家は、防虫剤や化学肥料を使わない。消費者のそばで生産することで、中間業者などをスキップして、適正な価格で消費者に届けられる。これまでのシステムでは農家は末端価格に対してなんの影響を与えることができない。これが改善されるはずだと、提案書は述べている。さらにコストを下げ、利益を拡大することで、緑の農家が増えるはずだ。
緑の農民の運動が示唆しているのは、窒素排出問題だけではない。水、気候そして土壌の質の改善である。デモを行っている農家は「農家がなければ食料はない。」と叫んでいるが、緑の農家は「よい土壌がなければ食料はない」と声を上げている。結局のところ、土壌の肥沃化と生物多様性と健全な自然に行き着く。
そしてもうひとつの課題である「適正価格」。政府が適正価格を決めるということは、市場経済が支配している現在、どのようなインパクトがあるのかはまだ未踏の領域である。
2018-09-02
オランダ農業トレンド「酪農から昆虫飼育へ?!」
最近オランダでは、乳牛や豚を飼育していた農家が、バッタやハチやミールワーム(昆虫の幼虫)の飼育に転じている。この昆虫飼育業はこれからの農業セクターになると注目されており、今後も伝統的な酪農業からこちらに転じる農家も増えそうだ。
牛乳価格は下がる一方だというのに仕事はきつい酪農業農家が、仕事も楽な上、収入も多い昆虫飼育へ転じるのは自然な成り行きかもしれない。農業科学分野では世界有数のワーヘニンゲン大学の研究者であるファン・ハイス氏は「昆虫飼育は乳牛や豚の飼育に比べ、環境への負荷が大幅に低い。温暖化ガスの発生量も少ないし、水の使用量も圧倒的に少ない。」と昆虫飼育の利点を上げている。昆虫はタンパク質などの栄養素に富んでいるので、動物そして人間の食料としても有望だ。ただし欧州連合(EU)の規則では、昆虫は豚と鶏の餌としてはまだ使用が許可されていない。ファン・ハイス氏によれば、これもいずれは解禁になると楽観的である。「昨年の7月から魚の養殖での昆虫を餌にすることが許可されているので、今後2年間で豚や鶏の餌としても使用される可能性は高い。おそらく昆虫飼育業は爆発的に拡大するはず。」と同氏。
9年前から昆虫飼育業を行っているアールツ氏の会社は拡大を続け、現在では国際的にもトップの地位を築いている。アールツ氏も環境に優しい昆虫飼育業をこれから急激に発展するビジネスだと見ている。残飯を餌にする昆虫が、今度は自分が餌になるという巡廻型経済(サーキュラーエコノミー)を体現しているビジネスといえる。この新しい市場への投資の増加も見込まれているだけでなく、政府の支援も動き始めている。農業・食糧省のスハウテン大臣は、今後家畜だけでなく人間の食料としても昆虫への需要は高まるとし、昆虫飼育の推進を支持している。
2018-07-19
空前の快晴続きで水不足に、農業に打撃
オランダや欧州各国では雨が降らない快晴の日々が続いているが、これによる水不足で農業に打撃を与えている。とくにレタスなどの野菜は価格が2倍に上昇した。オランダの農業協会であるLTOによれば「水不足で野菜の生産が落ちる」ため、レタス、キャベツ、カリフラワーなどの値段が上昇している。
水不足による農業への影響に関する数値はまだLTOは発表していないが、野菜は質と量ともに減少すると予想されている。
収穫が半分に減ると市場価格は3倍に上がるが、流通機関と契約している農家にはあまり影響がない。これに対し非契約農家は価格上昇により利益を得るという。
また地域によって乾燥による影響も異なる。オランダの低地地方の農家は小川や運河などから水を汲み上げ水撒きができるが、北ブラバントやアハターフックなどの少し高地ではこれができず、地下水や雨に頼っている。LTOによれば、水道水による水撒き禁止令を破り罰金を払ってでも収穫を成功させたいという農家もあるという。
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