2023-03-08
オランダでは週4日労働が普及

週4日労働がオランダで普通になりつつある。これまでの週5日労働を1日あるいは2日減らすという人が増えている。現在いわゆるパートタイマー(日本のパートとは違う)の数が460万人に増えていることも不思議ではない。オランダ人の平均労働時間は週に32.2時間でヨーロッパのどの国よりも短い。
「オランダは週3日あるいは4日労働の先駆者。すでに多くの人が雇用主と合意している。週4日労働というと新しいもののように聞こえるが、オランダでは普通のこと。」と雇用者協会のAWVN。ライデン大学のファン・フリート経済学教授も「オランダでは多くの従業員が週4日労働を選ぶことが可能だ。法的にもフレキシブル労働法(Wet Flixibel Werken)で保障されている。つまり誰もがこれを選べるのだが、給与が減るので躊躇する人が多いことも確かだ。」と述べている。
パートタイム労働といっても就業時間が短いだけで、雇用条件はフルタイムと同じ。女性のパートタイマーは多いが、オランダでは男性も他の欧州諸国と比べて多い。
英国で行った就業時間短縮実験によれば、40%の人がストレスが減り、70%がバーンアウト症状が軽減した。体も心も健康状態が改善されたという。
ファン・フリート教授によれば、「週4日労働で、身体的、精神的な状況が改善され、ワークライフ・バランスがよくなる。」という。また労組CNVも、4日労働で介護などの時間に有効に使えるとしている。また、4日労働でも公務員のように1日に9時間働くなどで5日分の労働をすることも可能だ。ただしこのやりかたがすべてのセクターで通用するわけではない。生産ラインや週末でも営業しているスーパーマーケットなどでは無理なことが多い。
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2022-08-01
8月1日から労働法が変わり学費の払い戻しなどが可能に

月曜日から労働法が変わり従業員の立場が改善される。パートタイムやアルバイトに関する法律の緩和やトレーニングや学習費用の払い戻しなどが含まれる。ただし、権利の強化には義務も伴うことも忘れてはならない。例えば雇用主はオンコールで働いている人に出勤を義務付けたり、正規の仕事以外にアルバイトやボランティアの仕事をする場合に報告をしなければならない。
これは「透明で予測可能な労働条件(Wet Transparante en Voorspelbare Arbeidsvoorwaarden)」と呼ばれる新法である。この法律で、従業員が仕事の規則が明確になることを目的としているが、他の分野でも従業員の権利が拡大する。
とくに、医療関係や飲食店などで労働日時が決まっていないオンコールで働く人達には朗報である。雇用主は従業員と相談の上、働く日時を前もって決めねばならなくなる。決まった日時以外に呼び出された場合には従業員はこれを拒否する権利を持つ。ただし、逆に従業員は決められた日時に働く義務が生じる。
新しい法律では、従業員が仕事に関する学習やトレーニングを自分で受けた場合に、その学費が請求できるようになる。また可能であれば学習やトレーニングを勤務時間中に受けることもできる。また学習やトレーニングのための交通費などの費用も会社に請求可能となる。
8月1日から、通常の仕事以外にアルバイトをするのも簡単になる。雇用主は正当な理由がない限り、これを認めねばならない。ただし、アルバイトだけでなくボランティアの仕事に関しても雇用主に報告する義務が生じる。
2021-02-16
「トニーズ・チョコロンリー」、児童労働を使わないチョコレートリストから削除

オランダで最もサステイナブルなブランドに挙げられているチョコレート「トニーズ・チョコロンリー( Tony's Chocolonely)」が「奴隷(児童労働)を使用していない製品リスト」から削除された。カラフルなパッケージと豊富な味の種類で、オランダのスーパーマーケットで見かけた人も多いはず。このチョコレートメーカーのモットーは、パッケージにも書かれている「生産過程に奴隷(児童労働者)を100%使用していない。」という人々の良心に働きかけるもの。これが突然一転した。
チョコレートの原料であるカカオの栽培には未だに児童労働者や奴隷に近い労働者が従事している。これをなくすために、2007年に米国の
「奴隷を使わないチョコレート(Slave Free Chocolate)」という機関が組織され、これに適したチョコレート製造業者をリストアップしている。「トニーズ・チョコロンリー」もこのリストに載っていたのだが、この突然の削除の背景には何があったのだろうか?
トニーズは、スイス(ベルギー)の多国籍企業である「バリーカレボー」社と協力していることが、このリストからの削除の理由だという。バリーカレボーは「生産チェーンに児童労働や近代の奴隷制度の使用は排除しない。」と公表している企業だ。
トニーズ・チョコロンリー社は今回のリストからの削除を非常に遺憾だと表明、バリーカレボーとのコラボレーションは、小さな企業の努力で他の大規模チョコレート生産者の意識を変えたいことが根底にあったと述べている。トニーズ社は昨年だけでも、バリーカレボー社管轄のトニーズのチョコレート生産で、387の児童労働を使った栽培農場を発見し、このうち221ヶ所でこれを是正している。
トニーズ・チョコロンリー社は2018年からオランダ最大のチョコレート製造企業となっている。
2020-02-10
外国人知識労働者数、他国に比べオランダでは低く

オランダで働く外国人知識労働者(kenniswerkers、knowledge workers)は多いように感じるが、実際に蓋を開けてみると労働人口の4%と少ない。欧州他国ではフィンランド以外でどこの国でもオランダより外国人知識労働者の割合が高いという結果が出ている。オランダは高学歴の知識労働者の誘致に力をいれているが、政府の要請を受けて調査を行った中央統計局の調査結果でこの低い数字が露呈された。
2016年から2018年の間のオランダで働く外国人知識労働者の平均数は38万3千人。それでも過去15年間で2.7%から4.2%に伸びている。ベルギーでは7%、英国では9%が外国から来た知識労働者である。外国人知識労働者数が最も多いのはルクセンブルグで、全労働人口の27%近くに及ぶ。
オランダで働く外国人知識労働者の3分の2は管理職かテクノロジー分野のサービス業。そして多くが自営業であることが他国と違う。2016-2018年の期間でオランダで働く知識労働者の20%が自営業で、調査にあたった国では割合が一番高い。国籍では南アメリカ、とくにスリナムやアンティールからの移住者が多い。
オランダ政府は海外からの知識労働者を求め各種戦略を練っている。一番需要が高いのは研究とイノベーション部門で、この分野の人材が強く求められている。
2020-01-27
蘭エネルギー会社エネコ、大戦中の強制労働者と三菱の話し合いを望む

蘭全国紙Trouwの報道によれば、オランダのエネルギー企業エネコ(ENECO)の三菱商事による買収が思わぬ事態で難航している。エネコはオランダの44の市町村が共同で所有しているが、これらの株主は先の大戦中のオランダ人強制労働者との話し合いを望んでいる。
昨年末、三菱がエネコを41億ユーロで購入する旨を発表した。しかしながらこの戦時中の問題が交渉交渉に支障をきたしている。推定によれば大戦中オランダ領であったインドネシアからオランダ人捕虜が7306人日本へ競争強制労働者として送れこまれた。このうち最低でも661名が三菱鉱山と三菱重工で炭鉱及び造船労働者として働いていたという。
エネコの株主である41の市町村は三菱が戦時中のオランダ人強制労働者と話し合いを持つべきだと主張している。さらに株主からなる特別委員会は三菱による謝罪と補償金を要求している。
現在11人の元強制労働者たちが存命しているが、そのうち謝罪を受けたと言う人は1人もいないと言う。長崎の造船所で強制労働していたというう現在100歳になるオーストダムさんは、「もし謝罪をしてくれるならそれを受け入れる覚悟はあります。それでやっと心が落ち着きます。」と述べている。戦前オランダは、インドネシアを植民地としていたが、戦争で日本軍が侵入しオランダ人名が捕虜なっていた。その一部の人は日本へ強制労働者として送られていた。
三菱のスポークスマンによれば、三菱商事が設立されたのは戦後の1954年なのでこの戦時中の労働についてはコメントできないとしている。
2020-01-08
オランダ人はなぜ長時間労働を避けるのか

人手不足のオランダでは経営者側は従業員に少しでも長い時間働いてほしい。とくにパートタイムで働くひとは少しでも時間を増やして欲しいというのが、経営者側の言い分だ。経営者からなる団体AWVNの会長ファン・デ・クラーツ氏は、「現在パートタイムで働く女性のみならず男性も1時間でもいいので増やしてほしい。」と呼びかけている。パートタイムで働くのは、日本と違い大企業の男性社員にも多い。パートナー両方でパートタイムで働くことで育児を交代で行う人も少なくない。
コンサルタント会社マッキンゼーが2018年にオランダの人手不足は、すべてのパートタイマーが1時間余分に働けば解消すると発表している。とくに、介護、教育そして技術部門だ。ところが、実際に1時間でも長く働こうとする人は少ない。いったいなぜオランダ人は長期時間勤務を避けるのだろうか。
ティルブルグ大学の労働市場を専門とするウィルトハーゲン教授によれば、オランダ人ほど自由時間を大切にする人種は世界にいないという。言い換えれば、オランダ人は労働に対する倫理観(義務感)が低いらしい。これは決して働くのを嫌がっているというのではない。ボランティア活動などの無料奉仕は率先してやっているのがオランダ人だ。また、週25時間パートタイムで働く人に1時間増やして欲しいと要請しても誰も興味を示さないのは、これまでの収入である程度の生活ができるからだ。
さらに税制も長時間労働を避けることに影響している。所得が増えれば増えるほど累進課税で税額が上がるため、手取りはさほど変わらないのだ。いずれにせよ、パートタイムで働くオランダ人は少しの給与の増加より、これまで通りの自由時間で家族と過ごすことを好む人種のようだ。
(参照記事 RTLZ Nieuws)
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