2023-03-09
オランダの農業従事者、農薬による健康被害増

オランダの農家で働く人たちの血液に農薬に含まれる成分が多く含まれ、農家のハウスダストには144種の有害な農薬成分が見つかった。ヨーロッパの基準ではこれが規制することが難しい。複数の成分が身体にどのような影響を与えるのかを見極めるのが難しいからだ。研究者は、パーキンソン病やガンそして生殖能力の低下などが関係すると懸念している。
アデマ農業大臣が下院に農地に使う水の水質に関し書簡によれば、オランダの農地の42%が汚染されているという。窒素やリン酸塩などの肥料による汚染である。また農薬による汚染も進んでいるという結果がワーヘニンゲン大学がEUのために行った調査でも明らかにされていう。汚染は農地だけでなく農家そして人体にも広がっている。
農薬による汚染は、地域によって大きく異なる。ある場所では、毒性基準を千倍以上超えている。欧州食品安全機関 (EFSA) によると、ハウスダストに含まれる物質の 40% が「おそらくまたは確実に」発がん性である。さらに、薬物の 33% は内分泌かく乱物質であり、63% は生殖能力に影響を与えたり、胎児の異常につながる可能性があるという。またパーキンソン病も引き起こす可能性が高い。この病気は世界で急速に増加している脳疾患で、農薬の使用の増加と比例している。
2018 年、オランダ国立衛生研究所RIVM は地元住民の調査で果物の栽培と疾病の関連性を発見した。その 2 年後、保健評議会は、脳疾患のパーキンソン病、アルツハイマー病、および筋肉疾患の ALS との関連性を立証する国際的な研究を指摘している。
有機農法は化学農薬を使用しないが、農場はサプライチェーンや周辺の畑を通じて接触することもある。「輸入された大豆は汚染されている。また、船の船倉は、昆虫の被害から貨物を保護するために、非常に有毒なシペルメトリンで処理されている。」
別の学者は、農地の汚染は喘息、花粉症、多発性硬化症などの免疫疾患の増加との関連していると指摘している。
農地の汚染は間接的に消費者へも影響を与えていることは確かだ。
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2023-01-24
乳製品と卵の輸出額増加でオランダの農家潤う

農業製品輸出では世界第2位のオランダの2022年の輸出高は1223億ユーロという最高記録を更新した。これは2021年の17%増である。とくに、乳製品と卵は国外では引き手数多だった。これはオランダ中央統計局とワーへニンゲン大学リサーチ(WUR)が発表した数字である。
この増加は、値上がりするコストを輸出価格に転嫁したことが反映されている。例えば、農家は飼料や化学肥料、花卉栽培業者は高騰するエネルギー費を輸出価格に転嫁した。
最も需要が多かったのはオランダの乳製品と卵。一昨年はこれらの製品は輸出で第3位だったが、価格を上げたことでトップに躍り出た。コスト上昇はウクライナでの戦争によるもので、エネルギー費と飼料価格の上昇が要因となっている。卵価格の上昇は鳥インフルエンザで供給が減ったことも大きな要因である。
輸出のために乳牛や鶏を増やし、自国での窒素排出が増えるという状況を批判する人たちも少なくない。
2022-08-15
「解放記念の旗と農家の抗議の旗は共存」オランダの退役軍人会

日本では8月15日は終戦記念日。オランダでは旧植民地インドネシアが日本軍から解放された日である。毎年インドネシアで終戦を迎えた軍人らが記念の式典を行い、オランダの国旗が掲げられる。
これとは別に数週間前から道路沿いや住宅に、オランダの国旗を逆さまにした反旗が並んでいるのを見かける。これは政府の窒素削減政策による農家削減に対する抗議の旗である。通常のオランダの国旗は赤白青が縦に並んだものだが、農家の抗議の旗は青が上に来ている。
オランダ退役軍人会(NLVi)は、この日のために農家の抗議旗を撤去するよう進めていた。しかし本日退役軍人会は、「農家の抗議に関しては中立を保つ。」と発表、国旗と抗議旗の共存を認めた。農家の抗議に関しては中立の立場だが、デモの権利には言及。「我々は自由な国に住んでいる。抗議の権利を認める。」とコメントしている。
2022-07-28
窒素政策反対の農家の抗議行動激化、高速道路で放火など

窒素ガス削減に対する農家の抗議行動は激しさを増し、高速道路で廃棄物やタイヤなどを燃やすなど収集がつかなくなっている。道路水道局は、水曜日に高速道路A1のフォールスト(Voorst)付近で廃棄されたゴミを片付ける業者を探すなど、除去作業に忙殺されている。これまではトラクターで高速道路を低速運転するなどの抗議活動を農家は行っていたが、水曜日から廃棄物やアスベストなどを燃やすなど抗議は激化している。このため、フローニンゲン付近の高速A7に向かう道路が閉鎖されている。
今朝2時45分ごろフローニンゲン州ミッドヴォルデでは道路上で車のタイヤが燃やされ、これにより追突事故も起きている。他の場所でも同様な事故が起きたため、フローニンゲンとドラフテン間の道路は閉鎖中だ。また北ホランド州のメーデンブリックでは干し草に火がつけられて炎上。このためホールンとデン・ウーファー間は閉鎖中である。
警察によれば、今後も高速道路にゴミなどが投棄される可能性があるため、高速道路利用者は注意するよう呼びかけている。
道路水道局は道路のゴミの始末を業者に依頼しているが、アスベストの除去には特殊業者が必要。業者が作業している最中にも農家がこれを阻止するなど、事態は悪化の一方だ。
これまで農家を支持していた国民もこのような過激な抗議活動で離れていく可能性もある。政府はすでに農家との話し合いを約束していた。
2022-07-07
政府「緑の農家」にオランダ農業の将来性

窒素排出をする農家を減らそうとする政策に反対し、農家のデモや暴動が続いている。オランダの農業は行き詰まりに直面しているのだろうか? 効率性と生産高だけを求めて発展し、輸出高世界2位を誇るオランダの農業は、根本から見直しが必要なのかもしれない。昨日、有機農業を行う農家2500人が、新しいシステム「緑の農家計画」を提案したが、農業大臣と自然・窒素排出担当大臣はこれを肯定的に受け止めている。「これがオランダの農業の将来だ」と農業大臣は称賛している。
提案では「農作物に対し適正な価格がつけば、有機農家はやっていける」と述べている。緑の農家は、防虫剤や化学肥料を使わない。消費者のそばで生産することで、中間業者などをスキップして、適正な価格で消費者に届けられる。これまでのシステムでは農家は末端価格に対してなんの影響を与えることができない。これが改善されるはずだと、提案書は述べている。さらにコストを下げ、利益を拡大することで、緑の農家が増えるはずだ。
緑の農民の運動が示唆しているのは、窒素排出問題だけではない。水、気候そして土壌の質の改善である。デモを行っている農家は「農家がなければ食料はない。」と叫んでいるが、緑の農家は「よい土壌がなければ食料はない」と声を上げている。結局のところ、土壌の肥沃化と生物多様性と健全な自然に行き着く。
そしてもうひとつの課題である「適正価格」。政府が適正価格を決めるということは、市場経済が支配している現在、どのようなインパクトがあるのかはまだ未踏の領域である。
2022-07-06
農家デモで暴動、警察が高速道路で発砲

オランダ北部ヘーレンフェーンで火曜日夜22時40分ごろ、警察が農家のデモ隊に発砲するという事件が起きた。警察によれば、ヘーレンフェーン近くの高速道路A32上で、トラクターに乗りデモをしていた農業従事者たちが、パトカーに乗り込むなどの暴動行為を起こしたため、警告の意味で発砲したという。トラクターには命中したが、負傷者は出ていない。この暴動で警察は3人を逮捕している。現在、警察ではこの発砲行為が正当であったかを調査中である。
火曜日夜にはオランダ全土で農家によるデモが行われた。高速道路A50ではアーネムとアペルドールンの間がトラクターで封鎖されている。また同時に干し草の俵やタイヤを燃やすなどの行為に出て、消防車が出動する事態に陥った。また、ヘルダーマルセン(Geldermalsen)とヴィエルト(Weert)では、スーパーマーケットの流通センターを農家が一時期占拠した。フリースランドのシント・アナパロヒーでは、トラクターが野菜果物の配送センターに乗り込んでいる。
窒素排出規制に反対する農家は今週の月曜日から大々的なデモを行っている。これまでもトラクターで高速道路を走行し、交通を妨げるなどのデモは行っていたが、今週からは規模や内容が深刻化している。流通センターを占拠されたスーパーマーケットも数千万ユーロの損失を被っている。政府は今回の暴動などに対し「一般の人を困らせない合法なやりかたでデモをすべき」だとコメントしている。
水曜日の朝にはフローニンゲン空港の占拠が予定されているが、検察、警察そして市当局との交渉済みだという。
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